小山ゼミ 2021年度3年Bグループ(関口美奈、加藤美玖、佐藤咲喜、東出夢香、山田愛子)
※国際ビジネス研究インターカレッジ大会(IBインカレ)提出論文 (IBインカレについてはこちら)
本稿はゼミ論文の概要を簡潔にまとめた「サマリー」である。
1.問題意識
我が国では、少子高齢化による労働人口の減少が進んで、人手不足が深刻化しており、女性の労働力に期待が高まっています。しかし、女性の就業に関する問題として、管理職に占める女性割合が依然として低いこと、妊娠や出産を機に離職する人が(減少傾向にはあるものの)存在していることがあります。これらの問題意識を踏まえ、女性社員の活躍に向けて、ワーキングマザーが理想の働き方をするには何が必要であるか明らかにしたいと思い本研究に取り組みました。
2.仮説
本研究では、インクルーシブ・リーダーシップが心理的安全を媒介して、ワーキングマザーのワークエンゲージメント、キャリアアップ意識、理想的な働き方に影響を与えているのか検証しました。そこで以下3つの仮説を検証しました。
- 仮説1: インクルーシブ・リーダーシップは心理的安全を媒介し、ワーキングマザーのワークエンゲージメントに正の影響を与える。
- 仮説2: インクルーシブ・リーダーシップは心理的安全を媒介し、ワーキングマザーのキャリアアップ意識に正の影響を与える。
- 仮説3: インクルーシブ・リーダーシップは心理的安全を媒介し、ワーキングマザーの理想的な働き方に正の影響を与える。
3.調査計画
調査方法は、Googleフォームによって作成したアンケートに、WEBリサーチ会社のモニター会員から回答してもらいました。調査対象は、(1)女性、(2)現在就業している、(3)現在未就学の子供がいる、という3つの条件にすべて当てはまる人としました。166人から回答を得ることができました。
4.結果
仮説検証のために相関分析を実施したところ、結果は以下の通りとなりました。
仮説1 「インクルーシブ・リーダーシップは、心理的安全を媒介し、ワーキングマザーのワークエンゲージメントに正の影響を与える。 」は支持されました。
仮説2 「インクルーシブ・リーダーシップは、心理的安全を媒介し、ワーキングマザーのキャリアアップ意識に正の影響を与える。」 は支持されず、直接効果のみが有意になりました。
仮説3 「インクルーシブ・リーダーシップは、心理的安全を媒介し、ワーキングマザーの理想的な働き方に正の影響を与える。」は支持されました。
5.考察
最後に、調査結果について考察します。
仮説1と仮説3は心理的安全の部分媒介効果がありましたが、仮説2は心理的安全の媒介効果が認められないという結果になりました。このことから、ワーキングマザーの働く意識には、心理的安全よりもインクルーシブ・リーダーシップの方が影響度が大きいことが分かります。職場の心理的安全も一定の効果はあるものの、それよりもワーキングマザーと上司との一対一の関係性がより重要であるということが考えられます。ワーキングマザーは仕事と生活の両立において様々な不安を抱えているため、上司がインクルーシブ・リーダーシップを発揮することによって、そうした不安に寄り添うことができ、かつキャリアアップを支援することにつながるのだと考えられます。
本研究を通して、ワーキングマザーに対するインクルーシブリーダーシップの有効性が明らかになりました。今回の研究ではワーキングマザーにのみ調査を行いましたが、それに加えて上司本人に対してアンケート調査ができればさらにインクルーシブ・リーダーシップへの理解が深まり、興味深い結果が得られると考えられます。