【ゼミ生研究報告】Cultural Intelligenceが大学生のカルチャー・ショック経験とグローバルキャリア志向に与える影響

小山ゼミ 2021年度3年Aグループ(前畑りま、坂口雅弥、飯塚智哉、丹治茉優)

※国際ビジネス研究インターカレッジ大会(IBインカレ)提出論文 (IBインカレについてはこちら

 

本稿はゼミ論文の概要を簡潔にまとめた「サマリー」である。

1.問題意識

 近年グローバル化が進み、多くの企業がグローバル人材の育成に力を入れています。大学生を採用する際にもグローバル人材と成長することを期待する企業も増えています。しかし、株式会社マイナビの調査によると、大学生のグローバルキャリア志向は低水準で推移しており、昨今は新型コロナウイルスが感染拡大している影響も大きいと思われます。コロナ禍により海外での経験が難しい現在、国内でも代替的にカルチャー・ショックを経験して異文化適応能力であるCultural Intelligence (CQ)を発揮することができれば、海外でのカルチャー・ショック経験同様にグローバルキャリア志向を高めることができるのではないかと考え、本研究に取り組みました。 

2.仮説

 本研究では海外でのカルチャー・ショック経験と国内でのカルチャー・ショック経験との間で、グローバルキャリア志向への影響に対する変化の有無をCQと関連させて分析しました。

 本研究では「国内でもカルチャー・ショックを経験することはできるのか」「カルチャー・ショックを経験したときに、CQを発揮することにより、グローバルキャリア志向を高めることができるか」という視点から以下の仮説を設定しました。

  • 仮説 1: 国外カルチャー・ショックを受けると、グローバルキャリア志向が下がる 
  • 仮説 2: 国外カルチャー・ショックを受けた時に、CQ が発揮されると、グローバルキャ リア志向が上がる 
  • 仮説 3: 国内カルチャー・ショックを受けると、グローバルキャリア志向が下がる 
  • 仮説 4: 国内カルチャー・ショックを受けた時に、CQ が発揮されると、グローバルキャ リア志向が上がる  

3.調査計画

 大学生、大学院生・を対象にGoogleフォームでアンケートを作成しました。2021年10月に実施し、回答者数は202名となりました。

4.結果

 分析結果は次の通りとなりました。

  • 仮説1の想定とは逆の結果となり、海外でのカルチャー・ショック経験がグローバルキャリア志向を向上させることが明らかとなりました。
  • 仮説2は支持されました。海外でのカルチャー・ショック経験でCQを発揮すると、グローバルキャリア志向が高まることが明らかになりました。
  • 仮説3は支持されませんでした。
  • 仮説4は支持されました。国内でのカルチャー・ショック経験でCQを発揮すると、グローバルキャリア志向が高まることが明らかになりました。

5.考察

 「国外カルチャー・ショック」に関する仮説と、「国内カルチャー・ショック」に関する仮説に分けて考察します。 

 

  国外カルチャー・ショックについて、「国外カルチャー・ショックを受けた時に、CQ が発揮されると、グローバルキャリア志向が上がる」(仮説2)ことが認められました。国外カルチャー・ショックを経験した際に、それらに対応できる能力があるとグローバルキャリア志向が高まると考えられます。また、仮説1の分析結果から、国外カルチャー・ショック経験自体でもグローバルキャリア志向が向上することが明確となったため、CQはそれをより一層向上させる効果があると考察できます。

 

 

 国内カルチャー・ショックについても、国外カルチャー・ショック同様に、「国内カルチャー・ショックを受けた時に、CQ が発揮されると、グローバルキャリア志向が上がる」こと(仮説4)が認められました。したがって、海外に行くことができない現在、国内カルチャーショックとCQ発揮を経験することができれば、グローバルキャリア志向を高めることができると言えます。国内であっても、自分の価値観と異なるるメンバーと協働作業をすること(プロジェクト等)で、CQを発揮することができれば、グローバルキャリア志向を高めることにつながると考えられます。ただし、この点については、逆の因果関係があった可能性もあります。元来グローバルキャリア志向が高かった者が、国内で同様のカルチャー・ショックを経験し、もともと高かったCQを発揮したという可能性もあり得ます。

 

 今後の研究課題としては、国外・海外のカルチャーショックを経験する前後で、グローバルキャリア志向を測定するようにして、調査を精緻化する必要がある。