小山ゼミ 2020年度3年Cグループ(助川楓、丸茂ななみ、塩塚さくら、谷川海羽)
本稿はゼミ論文の概要を簡潔にまとめた「サマリー」である。
1.問題意識
日本では育児休暇を取得する男性がごくわずかであり、その理由は、育児休暇を取りづらい風潮があるからです。しかし、新型コロナウイルスが流行したことがきっかけで、多くの企業が在宅ワークを取り入れ、育児休暇を取得しなくても、必然的に家にいる時間が長くなりました。そこで、私たちはこれまで育児休暇を取りづらい風潮があった男性(父親)に注目し、ワークスタイルの変化が父親への意識・行動に与える影響について研究しました。
2.仮説
「在宅ワーク(休業・時短勤務)経験前よりも在宅ワーク(休業・時短勤務)経験後の方が、父親の育児参加度は上がる」と考え、以下の仮説を設定しました。
- 仮説1: 在宅ワーク(休業・時短勤務)経験中に家事・育児をたくさん行った男性ならば、価値観にも変化がある
- 仮説2: 在宅ワーク経験中に仕事と家事・育児を両立できていた男性ならば、今後も在宅ワークをしたいと考えている
- 仮説3: 在宅ワーク(休業・時短勤務)を経験した男性ならば、経験前・中・後で家事・育児に対する行動に大きな変化がある
3.調査計画
本研究では、以下の5つすべての条件に該当する方を対象にアンケート調査を実施しました。そして計36名の方々にご回答頂きました。ご協力ありがとうございました。
- 男性
- 高校生以下の子供がいる
- 夫婦同居
- 2020年3月以降、初めて在宅ワークを経験した
- 現在は在宅ワークが終了し、職場に出勤している
アンケートの質問は、「育児について」、「家事について」、「育児に対する意識について」、「今後について」の4つをカテゴリーで設定しました。
4.結果
仮説1「在宅ワーク(休業・時短勤務)経験中に家事・育児をたくさん行った男性ならば、価値観にも変化がある」については、支持されませんでした。
仮説2「在宅ワーク経験中に仕事と家事・育児を両立できていた男性ならば、今後も在宅ワークをしたい」は支持されました。
仮説3「在宅ワーク(休業・時短勤務)を経験した男性ならば、経験前・中・後で家事・育児に対する行動に大きな変化がある」は部分的に支持されました。在宅ワーク(休業・時短勤務)「経験前」よりも「経験中」のほうが家事・育児に対する行動をしていました。また、「経験中」よりも「経験後」のほうが家事・育児に対する行動をしていませんでした。一方、在宅ワーク(休業・時短勤務)「経験前」と「経験後」の比較では、家事・育児に対する行動に変化はありませんでした。
5.考察
本研究から、仕事があっても家に居る時間が長ければ、父親が家事・育児に普段よりも関与することが分かりました。そのため、子どもができた父親には育児休暇だけでなく在宅ワークという新しい選択肢も提案したいと思います。
一方で、父親の育児や家事に対する価値観の変化は、今回の分析では明らかになりませんでした。その理由は2つ考えられます。1つは、今回の在宅ワークが自ら望んだものではなく、コロナ禍というやむを得ない事情によるものであるため、価値観が変化しなかったという可能性です。もう1つは、今回の調査での在宅ワークの対象が2020年3月~9月という短期間であったことも要因として考えられます。在宅ワーク期間が延長している状態で再度調査を実施すれば、価値観の変化も見られるかもしれません。今後の研究課題にしたいと思います。
改めて、アンケートにご協力いただいた方々、本当にありがとうございました。